2013植林ボランティアツアー報告

報告者 安藤栄美

  • 期 間 2013年4月29日(月)~5月6日(月)
  • 参加者 安藤栄美理事長、本江一郎顧問、長島昭顧問、小林亮介理事ほか18名(男性8名・女性10名)以上22名

4/29(月)晴れ

 11時半に見送りの長村理事・外語大学学生さん3名と合流。協会荷物を宅配便窓口より受け取り、数名に振り分けて乗り込むように依頼する。昨年は、ツアー全体で重量を計算して貰えたのだが、今年は不可とのことで、合計3万円ほどの重量オーバー代金を支払うことになる。今後は、書物等の持参は控えるしかないと考える。(今回は、児童への環境教育絵本や夏の緑の少年団の報告書等の重量が嵩む書物が多かった。)

 ほぼ定刻の14:55にS7-568便にて出発して、ほとんどお決まりとなったパン・サラミ・チーズ・ケーキが入った軽食ボックスが配られ、夕食とする。

 20時過ぎに到着し、順調に検疫を受ける。本江顧問は、サクラの根につけてあるミズゴケを食して、無害であることをアピール。外野からデニソフ森林管理局植林部長やオルロフ通訳が何か発言してくれて、問題なく通関通過となる。

 空港には、ボルトルシコ森林管理局長も出迎えに来て下さっており、大変びっくりする。寒さにより、ナナイ地区の植林が心配されたが、なんとかできる状態になったと伺い、ほっとする。植林には局長のお孫さんのマーシャほか、昨年の緑の少年団国際交流に参加した青少年も参加して下さると伺う。

 小林理事、サクラ植樹準備のために事前にハバロフスク入りしてくれた藤田良子さんに迎えられ、太平洋大学のゲストハウスに向かう。 

 島昭顧問には、観光ビザで入国することになった中井ミヤ子さんと四津啓さんをともなってインツーリストホテルに向かっていただく。翌日、外国人入国登録を済ませた後に大学に合流して貰う。

4/30(火)曇りのち晴れ

 
太平洋国立大学での環境セミナー/初めてロシアの学生から質問があった

寒冷地でサクラを効果的に育てるためのサクラプロジェクトを実施

 
サクラサクラの合唱/大学構内にフジザクラとエゾヤマザクラを植樹


5/9に開花

 8時15分前に宿舎前に集合して、朝食をとるため近くのカフェに向かう。

 9時より、太平洋国立大学講堂にて環境セミナー「サクラプロジェクト」を開催する。会場には多くの学生が授業の一環で参加して下さり、質問にも手を上げて下さり、アンケートにも37人が答えてくれた。

 パーベル・リャブヒン学部長のご挨拶に続き、飛び入りで、生物の先生で植林に参加して下さっているビクトル・グリッグ先生が、昨年の平和祈念公苑における記念植樹の様子をパワーポイントで披露して下さり、オープニングを飾って下さった。

 演題1. 寒冷地における樹木の順応性  本江一郎氏
 演題2. サクラに関するレポート 太平洋国立大学  
 演題3. 常緑のチョウセンゴヨウとサクラを組み合わせたハバロフスクのランドスケープ  藤田良子氏

 学食でのランチにて、セミナー参加者と懇談をした後、午後から太平洋国立 大学構内において2種のサクラの植樹を行う。サクラサクラの合唱も行った。 本江顧問・小林理事・藤田さんは、全員にての植樹後に、グリーンポットを利 用した植樹処理を行うため残る。

 終了後、3時頃よりワロニシの植林地に向かい、2011年の緑の少年団が植え た苗木の確認を行う。その間、参加者は野鳥観察を楽しむ。平和祈念公苑にて 昨年植樹したサクラの様子を観察するが、苗木のほか看板も無くなっており、 残念に思う。残っていた苗木6本には、越冬のための処理を本江顧問と小林理 事が施してある。

 宿舎への帰り道にアムール河岸に寄り、河面を流れている氷を眺める。イン ツーリストホテルに泊まったメンバーは、ギシギシと氷が割れる音を聞くこと が出来たそうだ。貴重な体験であったと思う。

 夕食は、宿舎近くのレストランでロシア料理を楽しむ。当初からお世話にな っているインリーストホテルのナターリア・ストルビコワさんが駆けつけてく れた。

5/1(水)晴れ

 
はるかタルドキ・ヤンギ山は、何処 右はマニー山(シホテアリニ山脈を望む)/2004年に訪れた時も建設中であったソビエツカガバニに向かう林道


林道脇の森には、まだ雪が...

 9時に大学宿舎を出発してトロイツコエに向かう。途中、ところどころで野焼 きの様子が伺える。あまりの多さに驚くが、営林署の管理による野焼きのほか に、火事状態のものも含まれていると感じる。

 11時40分頃にマヤックにて、昼食をとる。ペリメニとボルシチが美味しか った。

 途中、野鳥観察を交えて15時過ぎにはこの日の宿舎であるドライブインに到 着した。チェックインの後、1998年の大山火事跡を目指して、ソビエツカガバ ニに向かう林道を進んでいくが、2004年に来た時に工事中であった道は、今で も工事中で、途中までしか行けなかった。道路脇の森には、まだ雪が積もって おり、はるか遠くに高い山々が見える。おそらくシホテリア山脈の最高峰であ るタルドキ・タンギもどこかに見えるはずだが、それは手前にみえるマニー山 の後ろであると教わる。

 1998年に燃えて、2004年には、まだ禿山だったとこが回復したのかどうか 調べたかったが、残念ながらUターンをして宿舎に戻る。工事現場で記念写真を撮っている私たちに、作業員のおじさんが大きなダンプカーで、「これから穴を掘るので、先に進めなくなる。どうするか?」とわざわざ聞きにきてくれた。よかった!知らずにもっと進んでいたら、帰ってこれなくなるところだった。ほっと胸をなでおろす。おじさんに感謝!

 まだ明るい19時に宿舎に戻り、夕食をとって、翌日の植林に備える。

5/2(木)曇りのち晴れ

 
2012年ナナイ地区植林地には、防火帯が作られていた/活着した苗木

 
植林場所には、馬糞が見られる。これは、馬を放牧することにより下草を食べてもらい、肥料にもなるとのこと。馬は決してマツは食べないとのこと。なるほど!!/2013年、ナナイ地区植林の様子

 
3年生のチョウセンゴヨウを300本植えた/ところどころで野鳥観察を楽しむ

 
まだ、寒く渡り鳥は少なかったが、貴重な種の観察ができた/あちらこちらで野焼きが見られる


流氷ながれるアムール河

 10時に宿舎を出発して、ナナイ区の植林現場に向かう。途中、森林管理局長 と植林部長が待っていて下さり、新任のビクトル営林署長を紹介される。合流 して現場に向かうと、緑の少年団国際交流に参加していたマーシャとウラドレ ンが来ていた。

 恒例により「モスクワ郊外の夕べ」を歌い、作業を始める。後で聞いたこと だが、ハバロフスク市民でこの歌を好きな人は、あまりいないそうだ。通訳の オルロフ氏はむしろ大嫌いだと言っていた。モスクワ中心主義への抗議の気持 ちがあるようである。以後この歌は封印しようと思う。

 皆さんが植林をしている最中に、昨年度の植林現場を視察する。防火帯が作 られ、場所を示す看板も立てられている。動物のふんが多くみられるため理由 を尋ねると、下草が生えた頃に、近所の牧場より馬を植林場所に放し、下草を 食べさせ、糞を肥料とするのだと伺う。馬はマツは食べないから、とのこと。 なんともエコで合理的な方法だこと。 安藤と本江顧問は、ナナイ営林署に向かい支払いを済ませる。その際、本江 顧問が6月に是非、馬の放牧状況を視察したいとお願いする。 ハバロフスク州のテレビ局が取材の訪れ、外語大の学生等がインタビューを受 ける。今回も3年生苗木を3000本植えた。

 昼食後、地元の新聞社から記念写真を依頼され、レストラン傍のアムール河 岸で撮る。関係者のみなさんとお別れをして、ハバロフスクに向かう。途中、 野鳥観察をするも、まだ渡り鳥は日本からハバロフスクに戻ってきていないよ うである。しかし、滅多に見ることができない貴重な鳥を確認することができ たと喜んでいた。

 ハバロフスク郊外の乗馬場に併設されたレストランで、ディナーをいただく。 魚料理より肉料理のほうが安いからとのことだったが、ステーキの付けあわせ が、焼肉であったのには、参ってしまった。

 サンベリーというスーパーで買い物をして、大学宿舎に戻る。ビクトル運転 手が食べていた「ひまわりの種」や「チョウセンゴヨウの実」が好評であった。

5/3(金)晴れ

 
今年は大へフィツィル自然保護区で環境を学ぶ子どもたちと一緒に植林を行った/2009年植林場所の様子

 
2010年植林場所 新しく杭を打って貰った/今年の植林の様子

 
3〜4年生のチョウセンゴヨウを1,300本植えた/大へフィツィル自然保護区

 
事務所脇にエゾヤマザクラを15本植えた/自然保護区の博物館でビデオ説明を見る


お土産に環境教育絵本をプレゼント

 ヘフィツィルの植林に向かうために、すべての荷物を持って9時に出発する。

 ヘフィツィルの宿舎に到着すると、大ヘフィツィル自然保護区のメンバーが 待っていてくれた。小・中学生も含む12名である。チェックインでごたごたし たため、大変お待たせをしてしまったが、全員で植林現場に向かう。

 シェロガエフ営林署長と前ハバロフスク営林署長のラディギン氏の出迎えを 受けて、「友好の森Ⅱ」記念碑の前で集合写真を撮り、小高い丘を登り、植林 場所に向かう。途中、依頼をしておいた年度ごとの場所を示す杭が打たれてい る。急いで立てたようで、まだしっかり杭が埋まっていなかった。

 この日の苗木は、6年生のもので1300本。今年の苗木の出来は、良いと聞く。

 長島顧問と共にヘフィツィル営林署にて支払いを済ませる。その間に参加者 は、植林に励んで下さった。ナナイ地区に比べ、苗木が大きかったので大変で あったと思う。

 大ヘフィツィル自然保護区のスピリドノフ所長をはじめ、全メンバーと共に カフェで昼食をとり、サクラ植樹のために大ヘフィツィル自然保護区に向かう。

 事務所隣の土地にエゾヤマザクラ15本を植える。記念写真の際に、サクラの 描かれた扇子を渡し、広げて写す。日本より持参した環境教育絵本である「か きじいさんとしげぼう」のロシア語版をプレゼントすると、表情の硬かった子 どもたちに笑顔が浮かび、日本の学生たちと親睦を深める。

 帰りに、自然保護区からウスリー島を眺めるが、建設中の大橋の向こうに中 国領が見えた。途中、やはり野焼きが見れたが、ビクトル運転手は、オルロフ 通訳に、スピリドノフ所長に、焼けている場所を知らせるように指示をしてい た。消防だろうか、タンクを背負って消火している様子も見れた。

 宿舎に戻ると、シャワーが出ない。お湯がでないとクレームが続出。しかし ながら、ここでは、しばらく待つという対処療法しかない。来年もこの宿舎に するかどうか思案のしどころだが、「一日くらいシャワーなんか浴びなくても、 死なないわよ。」と構えて下さるメンバーもおり、贅沢に慣れてしまった日本 人にとっては、良い経験ではないかと感じる。食事は、近所の主婦が作りに来 て下さっているようで、実に家庭的な美味しい料理だった。

5/4(土)晴れ

 
測量は一箇所のみ実施。杭が各場所の表2本ずつしかなかったので、奥二箇所も依頼した。

 
橋の向こうの島の半分は中国領である

 
 
太平洋国立大学 ビクトル先生に植物園をご案内いただいた

 午前中は、測量をするべくヘフィツィルの植林現場に向かう。学生とスタッ フのみが作業を行い、植林メンバーには、野鳥観察を楽しんで頂く。本江顧問 のご指導のもと、2009年植林場所の正面2本の杭の間を、測量ロープを使って 測るが、奥行きの杭が立っておらず、四方の測量はあきらめる。GPS装置を 使い、とりあえず、杭が立っている場所の測量のみ行う。我々の様子を見てい た署長は、やっと何をしたいのか理解して下さったようで、次回までに、それ ぞれの植林場所の四隅のわかる図面を用意することを約束してくれた。

 前日と同じカフェで昼食をしていると、デニソフ植林部長より、夏の緑の少 年団の打ち合わせをしたいと連絡が入る。メンバーは、先にハバロフスク市内 に向かっていただき、1時間ほどの充実した打ち合わせを行う。

 ボルトルシコ局長より、マーシャと共に、昨年の緑の少年団を手伝った大学 生の観光案内をしたいというお申し出をいただき、学生は別行動となり、植林 ツアーのメンバーは市内観光を楽しむ。16時より太平洋国立大学のビクトル先 生によるレクチャーを受けながら、植物園を散策する。この植物園は1997年に 協会が初めてサクラの苗木を持参した時に、試験植樹をお願いした所である。 ビクトル先生の声に呼応して小鳥が鳴き声をあげ、餌場となっている場所に 木の実を置くと、待ってましたとばかりに取りに来る。なんとも楽しいひとときであった。また、ここには終戦30周年の際に植物園勤務者の戦没者慰霊のために碑が立てられており、その周りにはチョウセンゴヨウマツが植えられている。そして最近になってやっと「ダフリアカラマツ」であると判明した立派に育ったカラマツ林もあった。

 ロシアでは、土曜日に結婚式を行うことが多く、この植物園に花嫁が隠れて花婿が迎えに来るという風習があるそうで、たまたま、お婿さんがお嫁さんを探し当てたところに遭遇した。皆で記念写真を撮らせて貰い、祝福をした。

 インツーリストホテルで学生たちと合流して、夕食をいただき、宿舎に戻る。

5/5(日)

 
シカチ・アリャン訪問

 
ナナイ人の子どもたちと一緒に食事/最終日は宿舎で懇親会

 朝から宿舎を出発してシカチ・アリャンに向かう。ビクトル先生にも同行していただく。途中、車中でカチューシャや恋のバカンスなどを合唱する。

 1時間40分ほどでナナイ族の博物館や学校の併設された庁舎に到着する。ニーナ村長や校長先生のお出迎えを受け、見学させていただく。

 外語大の学生のゼミの先生がナナイ語の研究者ということでお話すると、学校長はよく知っているとお話下さり、ナナイ語の教科書をお願いしてプレゼントしていただく。その後、ナナイ族の子どもたちによる歌や踊りを披露していただき、一緒にランチをいただく。食事後に折り紙で交流をして、それぞれが持ってきたお土産も渡して、さよならをする。協会からは、環境教育絵本をお渡しして、植林の意義を伝える。

 帰りに、NKシティーというデパートに寄り、夕食の懇親会用食料を買い込み、宿舎に戻る。最後の晩なので、パーティー形式で乾杯をして、一言づつ感想をいただく。

5/6(月)晴れ

 日本人墓地に寄り、お参りをしてから空港に向かう。

 ヒンガン自然保護区に向かう4名を除き、16名で帰国の途につく。

 定刻どおりに出発して、予定より早めに成田空港に到着する。

 何事も無く、参加者の皆さんと笑顔でお別れすることができたことは、なによりのことであった。